第一回キャラクター人気投票結果―1位―






悠人 「志紀ちゃん」

志紀 「えっ、悠人くん?」

悠人 「見つかってよかった。にしても、こんなところあったのか」

志紀 「うん、私も何も考えずに歩いてたら、迷っちゃったみたいで。
    もしかして、探しに来てくれたの?」

悠人 「ああ。少し気になったから」

志紀 「そっか、ありがとう。ごめんね、心配掛けて。
    でも、本当になんでもないし、大丈夫だよ。だから……」

悠人 「これは、オレのただ単なるお節介。だから、君は遠慮する必要も悪く思う必要もない」

志紀 「えっ……」

悠人 「いやなら無理には聞かない。だけど、話した方が楽になることもあると思うんだ。
    少なくとも、オレはそうだから」

志紀 「悠人くん……」

悠人 「幸いオレは今日1日だけの関係だし、他の人に漏らす心配もない。
    もし良かったら、話してみないか?」

志紀 「……ごめんね、悠人くん。ありがとう……」

悠人 「ああ」

志紀 「悠人くんは、イヴァに似てるね」

悠人 「イヴァに? 嬉しいけど、オレはイヴァみたいに優しくないよ」

志紀 「ううん、優しいよ。私は、そう思ったから」

悠人 「そっか。純粋に嬉しいよ、ありがとう」

志紀 「……ねえ、悠人くん。自分の気持ちって、どうしてこうも思い通りにはならないんだろうね」

悠人 「うん」

志紀 「あそこが、ああだったら。ここが、こうだったら。もっと楽になれたのに。
    右京を好きにならなかったら、こんなに苦しい思いをしなくて済んだのにって……」

悠人 「志紀ちゃん……」

志紀 「でもね、そんな風に思っちゃう自分が、嫌で嫌でしょうがないの。
    右京が生きて、今この場にいてくれるだけで幸せで、他は何も望まないって。
    そう誓ったはずなのに。それなのに……」

悠人 「……」

志紀 「もっと強くなりたい。この想いを後悔しないくらい強くなりたい。
    自分に、もう負けたくないの。でも、どうしたらいいのか、わからない」



悠人 「……いいんじゃないかな。弱い自分を許してあげても」

志紀 「えっ……」

悠人 「少しだけ、オレ自身の話をさせてもらうな。
    オレさ、人をすごく好きになる時って、友人にしても好きな子にしてもそうだけど、
    その人の弱さや欠点を好きになると思ってるんだ」

志紀 「弱さを?」

悠人 「ああ。どうしようもないけど、そんなところが愛しくて大好きで。
    その傷がその人の一番の魅力に、輝いて見えるんだ。
    この人のこんな弱さをここまで好きになれる奴なんて、絶対にいないって。
    オレは、そう自信を持って言える。
    志紀ちゃんだって、かっこよくて優しいだけの右京を好きになったんじゃないだろ?」

志紀 「悠人くん。……うん。短気で単純で不器用で。でも、誰よりも努力家で、いつもまっすぐで。
    そんな右京が好き。そんな欠点も弱さもひっくるめて、右京が愛しい。
    大好きなの。どうしようもないくらい、好きで好きでしょうがないの」

悠人 「うん。つまり、志紀ちゃんだって同じなんだよ」

志紀 「えっ……」

悠人 「そうやって悩んでる弱い君も、強くなりたいって泣いてる君も。
    そんな一生懸命な君だからこそ、輝いてる。とても魅力的だと、オレは思う。
    だから、自分を否定しないであげてほしい。弱い自分もどんな傷も、君の一部で必要なものなんだ。
    君が嫌いな弱さも醜さも、全部が君自身で大切なんだ」

志紀 「全部が、私自身で大切……」

悠人 「オレはさ、欠点も弱さも傷も、すべてをひっくるめて右京が大好きだって言える君は、
    本当に強いと思う。君よりも右京を大切に思える奴なんて、絶対にいないよ。
    大丈夫。オレが保証する。それにさ、その想いは必ずしも一方通行じゃないと思うよ」

志紀 「えっ、それって……」

右京 「志紀っ!!」

志紀 「右京!? な、なんで。どうしてここに」

右京 「バカ野郎! どうしてじゃねえだろ!!」

志紀 「う、右京。苦しい、離してよっ」

右京 「嫌だ」

志紀 「なんで……」

右京 「あたりまえだ!! 勝手にふらふらどこかに行きやがって!!
    心配、したんだぞ」

志紀 「えっ」

右京 「心配したって言ってるんだ。ちゃんと聞いとけ、アホ」

志紀 「うそ……」

右京 「ああ? オレの言葉が信じられねえってのか!」

志紀 「だ、だって、そんな、思ってもみなかったから」

右京 「チッ、この破滅的アホが」

志紀 「破滅的って!」

右京 「心配するに決まってるだろ。心臓が、止まるかと思った……」

志紀 「右京……」

右京 「勝手にどこかに行くんじゃねえよ。オレの傍から、離れるな」

志紀 「っ!? それって……」

修啓 「はいはーい、ちょーっとストップしようか」

右京 「おわっ!!?」

志紀 「しゅ、修啓先輩!?」

修啓 「はい、右京くん。志紀くんを抱きしめていたい気持ちはわかるけど、一回離れようね。
    悠人くんが砂吐きそうになってるから」

悠人 「なってません!! あんたって人は、せっかくまとまりかけていたところを!!」

修啓 「ストップ! 駄目だよ、それ以上は。ここは本編じゃなくて、企画なんだから。
    お楽しみが半減するだろう」

悠人 「意味がわかりませんよ!!!」

ラウル「まあまあ、悠人。ちょっと落ち着けって。修啓はこういう奴だ」

修啓 「はいはーい、皆さんおまたせしました。それでは、堂々の1位の発表をしましょうか」

右京 「修啓、てめえって奴は」

修啓 「右京くん、少し黙ってて。大切なところなんだから。
    さて、ここまで来たら、勘の良い皆さんは1位が誰か、もうおわかりでしょう。
    それでは発表です。
    『つぶやきの塔』一周年記念企画、第1回キャラクター人気投票。
    栄えある第1位は……」




【ドラムの音】




修啓 「『the Pure Grim Reaper』主人公、桐堂志紀!!」

志紀 「……え?」

右京・悠人「はああああっっ!!!!」

修啓 「ということで、1位おめでとう、志紀くん。
    右京くんと10票近く離しての、堂々の1位だよ☆」

志紀 「私が1位って、そんな、ええっ!?」

右京 「七三眼鏡、一体どういうことだ!!」

悠人 「そうですよ! なんですか、それ!!」

修啓 「だってさ、事実なんだもん。仕方がないじゃん。
    あんまり騒ぎ過ぎると、血管が詰まるよー」

右京 「おい、こいつぶっ飛ばしてもいいか」

ラウル「気持ちはわかるけど、少し落ち着こうな右京。
    修啓だって、悪気はないんだ、たぶん……」

右京 「嘘こけ!! 性悪100%の笑み浮かべてんだろうが!!
    大体、てめえこそ尻すぼみになってんじゃねえよ!!」

ラウル「俺だってわかってるよ、それくらい!!」

悠人 「あー、なんだか腹が痛くなってきた」

修啓 「おやおや、胃痛かい?駄目だよー、ストレスはこまめに解消しないと」

悠人 「原因に言われたくないです」

修啓 「とまあ、そういうことで」

悠人 「無視ですか、最後までスルーですか!!」

修啓 「本当におめでとう、志紀くん。さすがだよ」

志紀 「あの、先輩の背後が阿鼻叫喚になっている気がするんですけど……」

修啓 「細かいことは気にしなーい☆
    それじゃあ、志紀くんにも投票してくれた方へのメッセージをお願いしようかな」

志紀 「気にしないって……。わかりました。ラウル先輩、悠人くん、ありがとう。
    でも私、ちゃんとお礼は伝えたいんだ。
    だって、こんな私を好きだって言ってくれる人がいるんだから。
    感謝の気持ちを、伝えたい」

悠人 「志紀ちゃん……」

ラウル「志紀、おまえ」

修啓 「うん、そうだね。そうこなくっちゃ。それじゃあ、早速お願いするよ」



志紀 「こんにちは。神焔学園2年、桐堂志紀です。
    皆さん、こんな私を好きって言ってくれて、本当にありがとうございました。
    私は、本当に弱いです。この世界から見れば、塵よりも小さくて、
    吹けば飛んでしまいそうな、そんなちっぽけな存在です。
    でも、そんな私でも、心配してくれる人や、大切にしたい人がいるから。
    だから私は、自分をもう少し認めてあげようと思います。

    あなたの傍に、大切な人はいますか? 
    もしいるのなら、あなたのその気持ちを大切にしてあげてください。
    少しだけ優しくなれる自分に、笑いかけてあげてください。
    未来なんてわからないけど、今この時を、かけがえのない今の自分を
    少しだけ好きになってあげてください。
    そして、あなたの周りにはあなたのことを大切に思ってくれている人がいることを、
    どうか忘れないでください。
    私はきっとこれからも道に迷ったりするだろうけれど、
    そういうことを大切に出来る自分でありたいと、心からそう思います」



悠人 「志紀ちゃん……」

志紀 「ありがとう、悠人くん。悠人くんのおかげで、たくさんの大切なことに気付いた気がする。
    私は、この出会いを忘れない。悠人くんに貰った言葉、大切にするね」

悠人 「……ああ。オレの方こそ、ありがとう」

右京 「チッ」

志紀 「ちょ、ちょっと、右京! いきなりなんで耳塞ぐの!?
    聞こえないでしょ、離して!!」

右京 「おい、おまえ」

悠人 「えっ、オレ?」

右京 「……ありがと、な。こいつのこと、支えてくれたみたいで」

悠人 「右京……」

右京 「でも、惚れるんじゃねえぞ。つか、惚れても絶対渡さねえ」

悠人 「大丈夫、惚れないよ。オレにはオレの大切な人がいるからさ」

右京 「そうか」

志紀 「右京! いい加減離して!!」

右京 「ったく、うるせえな。ほらよ、これで文句はねえだろ」

志紀 「はあ。もう、何するのよ。いきなり耳なんか塞いで!」

右京 「ああ? おまえに教える義理はねえよ」

志紀 「右京!!」

ラウル「まあまあ志紀、少し落ち着けって」

修啓 「そうだよ。右京くんと悠人くんは、
    ちょっと女の子には聞かせられないような話をしていただけだから☆」

悠人 「……は?」

志紀 「女の子には聞かせられない……」

右京 「修啓、てめえっ!!」

修啓 「えー、だって本当の話じゃん。だったら志紀くんに話の内容を説明すればいいだろう?」

右京 「そ、それはっ」

修啓 「ということで、はい。これは1位の賞品ね」

志紀 「あ、はい。ありがとうございます」

右京 「修啓ーっ!!!」

修啓 「もう、右京くんはカリカリし過ぎだよ。そんな君には、これ!!
    パンパカパッパンパーン、煮干ー☆」

右京 「……殺っ」

修啓 「怒っちゃイヤン☆」

ラウル「わかっちゃいたけど、やっぱり最後まで引っ張るのかよ」

悠人 「もうオレ、帰っていいですか」

ラウル「あー、帰るな! あと少し、あと少しだから協力してくれっ」

悠人 「ラウルさん、すごい顔になってます」

修啓 「ほいうわへで、こえひて結果発表は終了へふ」

ラウル「おい、おたふく風邪引いたみたいな顔になってるぞ」

右京 「けっ、自業自得だ」

修啓 「ふう、ここまで長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。
    僕たちの戦いも、悠人くんたちの生活も、これからまだまだ続きます。
    今後とも、どうぞお付き合いください。
    以上。本日のお相手は、神焔学園3年天才サイエンティスト高槻修啓と」

ラウル「終わるのかよ!! はあ、同じく神焔学園3年、ラウル・ウェルズと」

悠人 「最後までこれですか。……獅子学園2年、悠人でした」

修啓 「それでは皆さん、See You Next Week!!」

ラウル「おいっ!!!!」








『つぶやきの塔』一周年記念企画、第1回キャラクター人気投票―END―